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(前回からの続き)

業務・システムの最適化の登場

 バブル崩壊後は税収も芳しくなく、政府もITにこれまでのようにジャブジャブ予算を突っ込んでもいられません。民間企業では当たり前のことですが、遅まきながら政府も「成果主義」と「投資対効果」の視点から、「業務プロセス等の抜本的見直し」に取り掛かります。

 その皮切りとなった電子政府構築計画(2003年7月17日CIO連絡会議にて決定)では、「業務・システムの最適化」により費用対効果を高め、人的・物的資源の効率的な活用を通じた行政の簡素・合理化を図ることにより、予算効率の高い簡素な政府を実現すること、を主要目標の一つとして掲げました。

 では業務・システム最適化の具体的な定義は何だったのでしょうか。 

 業務・システム最適化とは、従来の業務手順を見直し、共通システムの利用や業務・システムの一元化・集中化など、業務・システムの効率化・合理化を進めること、と定義されています。

 その具体的な内容は次の通りです。

> (1) 業務の効率化・合理化、利便性の維持・向上、安全性・信頼性の確保、経費削減にかかわる
>   具体的な方法、時期等を記述
>              最適化の方法例
>              ①組織間での重複的な処理を撤廃し、業務全体として無駄のない効率的な処理方法に
>               見直し
>               ②複数の組織で同様の処理が行われている業務において活用する情報システムの
>               一元化・集中化
>              ③民間機関等の外部で処理することが可能な業務は、民間機関等の外部に委託
>              ④必要性の乏しい手続きの廃止や添付書類の省略・廃止等の手続きの簡素化

> (2) 業務処理時間や経費の合理化効果を数値化

>  (3) 業務やシステムの内容、方法等の現状および将来像を統一的な記述ルールにより表現
 

EAガイドラインの公表

 業務・システム最適化を進めるにあたって、具体的な方法論としてもくされていたのが、2002年に経済産業省の旗振りによって提言されたEAでした。

 この当時既に米国政府機関において、組織全体の業務とシステム双方を設計・管理する手法としてEAが実績をあげており、それを経済産業省が日本に持ち込んだのです。ちなみに米国では1996年に導入され、当時国防総省、商務省、そして内務省などで目立った成果を上げていました。

 そして運命の2003年12月、経済産業省は米国のEAの手法を日本版にアレンジした「EAガイドライン」を公表。IT立国を目指す日本の夜明け、と期待した人間も少なからずいたことでしょう。何しろ電子政府の実現は3カ年にわたり毎年5000億弱の予算を割り当てられた国家プロジェクトです。そのプロジェクトの成否のカギを握るのがEAであり、日本を代表する官僚機構である経済産業省が満を持してEAのお手本を世に出したのですから、これには国内のIT業界から大いに注目を集めました。

 事実これ以降、官公庁マーケットに(おそらく最後の)特需が訪れました。

 中央省庁が一斉に大型システムの見直しと再構築を始めたわけですから、業界はそりゃもう大騒ぎです。

 この騒動についても皆様にお伝えしたいことがあるのですが、残念ながらEAとは直接関係なくなってしまいますので、是非別の機会を見つけてご紹介出来ればと思います。
 

そしてEAが巻き起こした悲劇へ

 さてEAガイドラインが公表され、霞ヶ関で巨大プロジェクトが次々と立ち上げられた訳ですが、ことEAという観点でどうなったかと言えば、まさに先に掲載した顛末のとおりです。

 EAが日本のIT業界に一石を投じたのは間違いありません。ただ波紋が大きなうねりに変わることが無かったということなのでしょう。実は霞ヶ関がEAで疲弊していた頃、EAの波紋は自治体へ及んでいました。霞ヶ関で得た教訓を反映し、もっとゆるいアプローチで実践できる内容にカスタマイズされて自治体に持ち込まれたのですが、残念ながら結局ここでもEAは潰えてしまっています。

 我々は経済産業省のサイト「EAポータル」や、総務省のサイト「自治体EA 業務・システム刷新化の手引き」で当時の残滓を覗くことができます。それらはトップページからは辿り着けそうもないくらいリンクの奥深くに、誰にも更新されずにただじっと身を潜めています。筆者は身を潜めた彼らを時折覗きに出かけます。特に経済産業省の「EAポータル」はEAに関する情報の宝庫であり、未だに重宝しているからです。

 私事で恐縮ですが、筆者はこの顛末の中で、それも霞ヶ関の中心で、EAの本質を理解した稀有な方との出会いに恵まれました。その出会いのおかげで、幸運にもEAの本質を垣間見ることができました。そして現在、EAを支援する強力なツールと方法論を擁し、世界中でEAプロジェクトを抱える企業に所属しています。筆者はこのコラムを書きながら、歴史の一証人として、そしてEAを実践する企業の一員として、我が国に着実にEAを広めていきたい、と改めて思うに至っています。

 それにしても、、、NHK大河ドラマではないですが、我が国の将来を外国の力を借りて変えようとする姿勢は、今も昔も変わらないようですね。もっとも明治維新はちゃんと成功しましたけど:P

(EA来襲 その時歴史は動かなかった 完)
 

※前回までのリンク
 EAコラム(1) みなさん元気にEAやってますか?
 http://www.ariscommunity.com/users/hide-char/2010-08-25-ea-1-ea

 EAコラム(2) EAが巻き起こした悲劇 ①
 http://www.ariscommunity.com/users/hide-char/2010-09-03-ea-2-ea

 EAコラム(3) EAが巻き起こした悲劇 ②
 http://www.ariscommunity.com/users/hide-char/2010-09-07-ea-3-ea

 EAコラム(4) EAが巻き起こした悲劇 ③
 http://www.ariscommunity.com/users/hide-char/2010-09-17-ea-4-ea

 EAコラム(5) EA来襲 その時歴史は動かなかった ①
 http://www.ariscommunity.com/users/hide-char/2010-10-20-ea-5-ea

Tags: EA